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生活習慣病の基礎知識

高血圧の基礎知識

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、心臓病(冠動脈疾患、狭心症、心筋梗塞、心不全など)、 腎臓病(腎硬化症、腎不全など)の原因となる高血圧。 血圧管理と生活習慣の改善で予防に努めましょう。
日本高血圧学会 実地医家部会 副部会長 
勝谷医院 院長
勝谷 友宏 先生
1

いま、日本では成人の約2.4人にひとりが、高血圧といわれています。

「高血圧治療ガイドライン2019」によると、2017年の高血圧有病者数は約4,300万人と推計されています。我が国の成人人口(2017年12月概算値1億513万人)の約2.4人にひとりに当たります。

2

診察室での血圧140/90mmHg以上、
家庭での血圧135/85mmHg以上は高血圧です。

血圧とは、心臓から全身に送り出された血液が血管(動脈)の壁を押す時の圧力のことです。心臓が収縮して血液を全身に送り出すときに動脈にかかる圧力を上の血圧(収縮期血圧)といい、心臓が拡がって次の送り出しの準備をしているときに血管にかかる圧力を下の血圧(拡張期血圧)といいます。

収縮期血圧
heart
心臓が収縮して血液が送り出されると、血管に圧力がかかる。
拡張期血圧
heart
心臓が拡がって血液が戻ってくると細い血管に血液が送られる。

血圧には、病院などで測る診察室血圧、自宅で測る家庭血圧、特殊な機器をつけて1日の血圧を測る24時間血圧があります。一般に家庭での測定値は、病院よりも低めになります。そのため、測定方法が異なると高血圧の基準値も変わってきます。
日本高血圧学会では自宅で測る家庭血圧で、上の血圧が135mmHg以上の場合または下の血圧が85mmHg以上の場合、あるいは、これらの両方を満たす場合に高血圧と設定されています。

収縮期血圧(mmHg) 拡張期血圧(mmHg)
診察室血圧 ≧140 かつ/または ≧90
家庭血圧 ≧135 かつ/または ≧85
3

高血圧は遺伝、食塩の摂りすぎ、肥満など、
さまざまな原因によって起こります。

高血圧には、原因が不明な本態性高血圧と、原因が明らかな二次性高血圧があります。
日本人の約80~90%が本態性高血圧といわれ、中高年齢以降に多くみられます。遺伝的な体質や食塩の摂りすぎ、肥満など、さまざまな原因によって起こります。遺伝的な体質だけでなく、食事や運動など生活習慣は家族で似てくるため、高血圧患者さんがいるご家庭ではご家族で生活習慣の改善も検討し、高血圧の発症を防ぎましょう。

4

高血圧は無症状であることが多いです。そのままにしておくと、
脳卒中や心筋梗塞など、命にかかわる病気になることがあります。

高血圧は無症状のことが多く、サイレントキラーと呼ばれており、ほとんどの人で自覚症状がありません。そのままにしておくと動脈硬化が進んで、脳卒中や狭心症、心筋梗塞など重大な病気を起こす可能性があります。また、徐々に腎機能が低下し、透析の治療が必要となってしまうこともあります。その結果、年間10万人の方が高血圧が原因で亡くなっていると報告されています。そのため、高血圧をきちんと治療することが重要です。

5

高血圧の治療

高血圧の治療目標

高血圧治療は、患者さんに合った降圧目標を設定し、治療を進めることが重要です。
日本高血圧学会では、患者さんの年齢に応じて以下を目標としています。

75歳未満の
患者さん
診察室血圧で130/80mmHg未満、
家庭血圧で125/75mmHg未満
75歳以上の
患者さん
診察室血圧で140/90mmHg未満、
家庭血圧で135/85mmHg未満

合併症のある患者さんは、この目標値よりもさらに厳しく血圧を下げる方がよい場合もあります。
かかりつけ医の先生に相談して、降圧目標を決めましょう。

診察室血圧
家庭血圧
75歳
未満
目標 130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
ただし、以下の病態では、右の値を目標とする。
  • ・脳血管障害
    (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)
  • ・尿蛋白陰性のCKD
140/90mmHg未満
130/80mmHg未満への
降圧は個別に判断
135/85mmHg未満
125/75mmHg未満への
降圧は個別に判断
75歳
以上
目標 140/90mmHg未満 135/85mmHg未満
ただし、以下の病態では、右の値を目標とする。
  • ・脳血管障害
    (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
  • ・冠動脈疾患
  • ・尿蛋白陽性のCKD
  • ・糖尿病
  • ・抗血栓薬内服中
忍容性があれば
130/80mmHg未満
忍容性があれば
125/75mmHg未満
75歳
未満
目標
ただし、以下の病態では、下の値を目標とする
  • ・脳血管障害
    (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)
  • ・尿蛋白陰性のCKD
診察室血圧
家庭血圧
130/80mmHg未満 125/75mmHg未満
140/90mmHg未満
130/80mmHg未満への
降圧は個別に判断
135/85mmHg未満
125/75mmHg未満への
降圧は個別に判断
75歳
以上
目標
ただし、以下の病態では、下の値を目標とする
  • ・脳血管障害
    (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
  • ・冠動脈疾患
  • ・尿蛋白陽性のCKD
  • ・糖尿病
  • ・抗血栓薬内服中
診察室血圧
家庭血圧
140/90mmHg未満 135/85mmHg未満
忍容性があれば
130/80mmHg未満
忍容性があれば
125/75mmHg未満
自力で外来通院できない健康状態の患者では、降圧治療のメリットとデメリット、実行可能性を含めて個別に判断する。
診察室血圧と家庭血圧に乖離が生じた場合は、家庭血圧の値を優先して判断する。
診察室血圧130~139/80~89mmHgの場合は、まずは生活習慣の修正を開始または強化する。
日本高血圧学会 高血圧診療ガイド2020作成委員会 編:高血圧診療ガイド2020, p.41

高血圧治療の基本は生活習慣の修正

正常血圧(診察室血圧120/80mmHg未満、家庭血圧115/75mmHg未満)以外のすべての患者さんに生活習慣の修正がすすめられています。
食事、運動など生活習慣を修正することで、高血圧の予防や改善が期待できます。また、防寒や情動ストレスのコントロールも有効です。
軽症の高血圧患者さんは、生活習慣の修正から治療をはじめますが、すでに降圧薬で治療を行っている患者さんに対しても有効です。うまくいくと薬剤の量を減らすこともできます。

減塩
肥満改善
お酒は控えめ
禁煙など
修正項目 具体的な内容
減塩 食塩摂取量6g/日未満
肥満の予防や改善 体格指数(BMI)*1 25.0kg/m2未満
節酒 アルコール量で男性20~30mL/日以下*2、 女性10~20mL/日以下
運動 毎日30分以上または週180分以上の運動
食事パターン 野菜や果物*3、 多価不飽和脂肪酸*4を積極的に摂取、
飽和脂肪酸・コレステロールを避ける
禁煙 喫煙のほか間接喫煙(受動喫煙)も避ける
その他 防寒、情動ストレスのコントロール
*1
体格指数 :「体重(kg)÷{身長(m)}2」で算出
*2
おおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合、ウィスキー・ブランデーはダブルで1杯、ワインは2杯
*3
肥満者や糖尿病患者では果物の過剰摂取に注意。野菜や果物の摂取については腎障害のある患者では医師に相談が必要
*4
多価不飽和脂肪酸は魚などに多く含まれる
日本高血圧学会、日本高血圧協会、支えあい医療人権センターCOML編:
一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」
解説冊子「高血圧の話」,p11, 2019
6

食事療法

食事療法の中心は減塩。
高血圧患者さんの食塩摂取量の目標は1日6g未満です。

食塩に含まれるナトリウムは体に欠かせない栄養素です。しかし、塩分摂取が多くなると、それを薄めようと血液中などに水分を取り込み血液量が増えるため、血圧が上昇します。血圧が上がると脳卒中や心筋梗塞などの病気にもつながります。また、食塩は加齢による血圧上昇にも影響します。そのため、食事の塩分管理が重要です。
日本人の食塩摂取量は少なくなってきているといわれていますが、実際にはまだ多く、ほとんどの日本人が食塩を摂りすぎています。
生活習慣病を予防するための1日の食塩摂取目標量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満ですが、高血圧患者さんの目標は1日6g未満です。

食塩・精製塩
小さじ1=6g
あら塩(並塩)
小さじ1=5g
塩ひとつまみ
(親指、人差し指、中指でつまんだ量)
塩ひとつまみは、今回の計測では、平均で0.5g(最小で0.2g、最大で0.9g)でした。
塩ひとつまみは、今回の計測では、平均で0.5g(最小で0.2g、最大で0.9g)で
した。
女子栄養大学短期大学部 調理学研究室(豊島美峰子教授)40名による実践調査
香川栄養学園広報戦略室 味のものさし 計量カップと計量スプーン,p4,p6,2020
https://www.eiyo.ac.jp/resources/ajinomonosashi.pdf

食塩を減らすための知識と工夫

食品や料理の食塩の量を把握し、塩分の摂りすぎに注意しましょう。長く続けるためには、食塩控えめでもおいしくいただける食事の工夫が必要です。

1日の食事を検証
よくある1日の食事を例に出し、どれくらいの食塩があるかを調べてみました。
ご飯、納豆、味噌汁、たまご焼、ハム
ラーメン、ぎょうざ
ご飯、焼き魚、味噌汁、酢の物、漬物
3食分
1日の食塩相当量 13.5g
食塩相当量 4.0g
たまご焼(1.2g)
ボンレスハム2枚(1.1g)
納豆(0.1g)
豆腐となめこの味噌汁(1.6g)
ご飯(微量)
塩分注意報
たまご焼にしょうゆをかけると、さらに塩分が多くなります。
食塩相当量 6.6g
しょうゆラーメン(4.4g)
ぎょうざ(2.2g)
塩分注意報
ラーメンのスープを半分にすると2.6gの塩分を減らすことができます。ぎょうざにしょうゆをつけるとさらに塩分が多くなります。酢とこしょうで食べるのもお勧めです。
食塩相当量 2.9g
あじの塩焼き(0.8g)
だいこんおろし(微量)
酢の物(0.8g)
かぶの葉の塩漬(0.2g)
こまつなと油揚げの味噌汁(1.1g)
ご飯(微量)
塩分注意報
魚やだいこんおろしにしょうゆをかけると、さらに塩分が多くなるので気を付けましょう。
トースト、目玉焼き、ソーセージ
カレー、サラダ
コンビニ弁当(牛丼)
3食分
1日の食塩相当量 9.9g
食塩相当量 3.1g
バタートースト6枚切り2枚(1.7g)
目玉焼き(しょうゆひとかけ)(0.6g)
ウインナーソーセージ2本(0.8g)
塩分注意報
パンを8枚切りにして、バターは食塩不使用のもの、またはジャムにすると、塩分を減らすことができます。
食塩相当量 3.0g
カレー(2.5g)
野菜サラダ(0.5g)
塩分注意報
福神漬やらっきょうを添えると塩分の摂取量が多くなります。ノンオイルドレッシングは塩分が高いので、気を付けましょう。
食塩相当量 3.8g
コンビニ弁当(牛丼) (2.3g)
豆腐とわかめの味噌汁(1.2g)
紅しょうが(0.3g)
※食品のパッケージ記載データを参考に算出
塩分注意報
紅しょうがと味噌汁を減らすと塩分を抑えられます。野菜も一緒にとりましょう。野菜に含まれているカリウムは血圧を上げない方向に働きます。
菓子パン
とんかつ定食
お刺身、焼き鳥、サラダ、味噌汁、ご飯
3食分
1日の食塩相当量 9.6g
食塩相当量 2.2g
デニッシュパン(チョコレート)(0.6g)
デニッシュパン(チーズ)(1.6g)
※食品のパッケージ記載データを参考に算出
塩分注意報
甘いパンにも生地に塩分が含まれています。
食塩相当量 3.1g
とんかつ定食(3.1g)
    ロースかつ
    こまつなと油揚げの味噌汁
    たくあん漬(3切れ・18g)
    ご飯(微量)
塩分注意報
ソースは塩分が多いので、かけすぎに注意しましょう。漬物と味噌汁を減らすと塩分を抑えられます。
食塩相当量 4.3g
お刺身(しょうゆを含む)(1.1g)
焼き鳥(1.4g)
ポテトサラダ(0.6g)
豆腐とわかめの味噌汁(1.2g)
ご飯(微量)
塩分注意報
お刺身にしょうゆをたくさんつけると、さらに塩分量が多くなりますので注意しましょう。味噌汁のわかめを野菜にするなどの工夫をしましょう。
梅干し1個
食塩相当量1.0g
たくあん漬5切れ
食塩相当量1.1g
ボンレスハム2枚
(厚さ2mm)
食塩相当量1.1g
あじの開き干し1枚
(130g)
食塩相当量1.8g
塩ざけ1枚
(80g)
食塩相当量1.4g
味噌汁1杯
食塩相当量1.2g
ポタージュ1杯
食塩相当量1.0g
きつねうどん1杯
食塩相当量4.9g
天丼1杯
食塩相当量3.0g
にぎりずし1人前
(しょうゆ込み)
食塩相当量3.4g
カップめん1個
食塩相当量4.9g
※ 食品のパッケージ記載データを参考に算出
食材選びの工夫
工夫
1

新鮮な材料を使う

新鮮な野菜や魚介類、肉などには、素材そのものの旨味や甘味があり、うす味でもおいしく食べることができます。

工夫
2

野菜や果物をしっかりとる

カリウムは血圧を下げる方向に働きます。野菜を多くとると塩も一緒に摂りがちなので、果物も含めてカリウムをしっかり摂りましょう。また、味噌汁に野菜などの具材を多くすると汁の量が減るので減塩につながります。

工夫
3

調味料の使用量を確認する

調味料の分量をきちんと量ることがポイントです。

工夫
4

調味料を工夫する

しょうゆを減塩タイプに変えたり、めんつゆやポン酢で代用するなど調味料を工夫しましょう。
旨味をきかせた濃いめのだしを使うと、うす味でもおいしく食べられるようになります。市販の顆粒だしやスープの素などは食塩量が多く含まれているので、減塩タイプのものを使うか、昆布やかつお節でだしをとると食塩量を減らせます。

調理の工夫
工夫
1

香味野菜、香辛料で香りや風味をいかす

しょうが、ねぎ、わさび、とうがらし、こしょうなどの香味野菜や香辛料は素材の味を引き立たせたりアクセントになったりし、減塩につながります。

工夫
2

酢や柑橘類などの酸味をきかせる

米酢などの酢やレモン、ゆず、かぼす、すだちなどの柑橘類で酸味をいかすと料理に風味がでて、うす味でも楽しめます。

工夫
3

香ばしさを利用する

ごま油や油揚げ、ナッツ類を加えると、香りとともにコクが増し、調味料を控えても十分おいしく、減塩につながります。また、焼きものの香ばしさはうす味を補い、うまさを引き出します。食欲をそそるだけではなく、見た目からも満足感があります。

工夫
4

味にメリハリをつける

すべての料理をうす味にすると食欲が減退する場合があります。バランスよく食べられるように1品だけ味つけを濃くするなど、味のメリハリをつけて食事全体で減塩するなど工夫しましょう。

食べ方の工夫
工夫
1

食卓に調味料を置かない

卓上に調味料を置いておくと、味を見る前に調味料をかけたり、かけすぎてしまうことがあります。

工夫
2

しょうゆの「かけすぎ」に注意する

しょうゆを必要以上にかけてしまうことを防ぐため、プッシュ式やスプレー式のしょうゆ差しなどを使うようにしましょう。

工夫
3

めん類の汁は残す

めん類の汁は塩分が多いため、全部飲まないようにしましょう。

工夫
4

食べすぎに注意する

味つけに気を付けても食べすぎれば食塩過剰となってしまいます。一人前の適量を食べるよう心がけましょう。

塩分チェックシートを活用しましょう。

高血圧患者さんの食塩摂取量は1日6g未満が目標です。食塩摂取量を簡便に評価できる塩分チェックシートを活用し、1日6g未満におさえましょう。

当てはまるものを選択してください。合計点数であなたの食塩摂取量の評価が分かります。
3点
2点
1点
0点
これらの食品を食べる頻度
みそ汁、スープなど
1日2杯
以上
1日1杯
くらい
2~3回/
週 
あまり
食べない
つけ物、梅干しなど
1日2回
以上
1日1回
くらい
2~3回/
あまり
食べない
ちくわ、かまぼこなどの練り製品
よく
食べる
2~3回/
あまり
食べない
あじの開き、みりん干し、塩鮭など
よく
食べる
2~3回/
あまり
食べない
ハムやソーセージ
よく
食べる
2~3回/
あまり
食べない
うどん、ラーメンなどの麺類
ほぼ毎日
2~3回/
1回/
週以下
食べない
せんべい、おかき、ポテトチップスなど
よく
食べる
2~3回/
あまり
食べない
しょうゆやソースをかける頻度は?
よくかける
(ほぼ毎食)
毎日1回は
かける
時々かける
ほとんど
かけない
うどん、ラーメンなどの汁を飲みますか?
全て飲む
半分くらい
飲む
少し飲む
ほとんど
飲まない
昼食で外食やコンビニ弁当などを利用しますか?
ほぼ毎日
3回/
週くらい
1回/
週くらい
利用しない
夕食で外食やお惣菜などを利用しますか?
ほぼ毎日
3回/
週くらい
1回/
週くらい
利用しない
家庭の味付けは外食と比べていかがですか?
濃い
同じ
薄い
食事の量は多いと思いますか?
人より多め
普通
人より
少なめ
合計 0
合計点
評価
0~8
食塩はあまりとっていないと考えられます。引き続き減塩をしましょう。
9~13
食塩摂取量は平均的と考えられます。減塩に向けてもう少し頑張りましょう。
14~19
食塩摂取量は多めと考えられます。食生活のなかで減塩の工夫が必要です。
20以上
食塩摂取量はかなり多いと考えられます。基本的な食生活の見直しが必要です。
𡈽橋 卓也ほか:血圧20巻12号 Page1239-1243(2013.12)より作成
7

適正体重

高血圧患者さんは、肥満の予防や改善も必要です。適正体重としてBMI(体重[kg]/身長[m]2)は、25未満を維持しましょう。
肥満の原因は、過食と運動不足です。減量のためには、摂取するエネルギー量を抑え、運動もあわせて行いましょう。
また、食塩摂取量が増えるとBMIが上昇し、肥満のリスクが高まることが明らかにされています。そのため、適正体重の維持のためには、減塩も役立ちます。

適正体重
BMI(体重[kg]/身長[m]2
=25未満
8

運動療法

高血圧のような生活習慣病においては、速歩・ステップ運動・スロージョギング・ランニングなどの有酸素運動がおすすめです。運動の強さは、ややきつい程度が適しています。あまり強い運動は、血圧が上がってしまうため高血圧患者さんにはおすすめできません。
運動時間は毎日30分以上、または週180分以上が目安です。しかし、はじめは軽めのものから行っていきましょう。
軽めの運動としては、笑顔を保って走れるくらいゆっくりしたペースで行う「ニコニコペース運動」がおすすめです。つらくない強度の運動量なので、体力に自信がなくてもすぐにはじめることができ、継続でき習慣化しやすいのが特徴です。
運動を習慣づけるためにも、継続しやすい運動を取り入れましょう。運動療法を始める前には、必ずかかりつけ医の先生と相談をしてください。

9

薬物療法

薬物療法について

生活習慣を改善しても血圧が目標の値までなかなか下がらない場合、降圧薬による治療を行います。降圧薬は多くの種類があります。患者さんの血圧や患者さんの状態などによって、患者さんにあった降圧薬を用います。ひとつの降圧薬で十分に血圧が下がらない場合はいくつかの降圧薬を組み合わせて治療します。服薬する時間や量は患者さんによって異なります。

降圧薬の種類と作用

降圧薬は患者さんに合わせて選択されます。

カルシウム拮抗薬
血管を広げて血圧を下げます
ARB、ACE阻害薬
血管を収縮させる体内の物質をブロックして血圧を下げます
利尿薬
血管から食塩と水分(血流量)を抜いて血圧を下げます
β(ベータ)遮断薬
心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げます
MRB
血圧を上げるホルモン(アルドステロンやコルチゾール)の作用を阻害して血圧を下げます
ARB:アンジオテンシン受容体拮抗薬、ACE阻害薬:アンジオテンシン変換酵素阻害薬
MRB:アルドステロン阻害薬
日本高血圧学会、日本高血圧協会、支えあい医療人権センターCOML編:
一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」
解説冊子「高血圧の話」,p14,15, 2019より改変
監修
勝谷 友宏 先生
日本高血圧学会 実地医家部会 副部会長 
勝谷医院 院長
学歴/職歴
1989年 和歌山県立医科大学 卒業
1993年 大阪大学医学部大学院内科系博士課程 修了(最終学歴)
1993年 米国Stanford大学医学部Falk心臓血管研究所
1996年 長寿科学振興財団 特別研究員
1997年 日本学術振興会 特別研究員(PD)
1998年 大阪大学医学部 助手(老年病医学講座)
2003年 大阪大学大学院 講師(医学系研究科 加齢医学講座)
2009年 大阪大学大学院 特任准教授(医学系研究科 臨床遺伝子治療学)
勝谷医院 院長(医療法人社団 勝谷医院 理事長)
2019年 大阪大学大学院 招聘教授(医学系研究科 臨床遺伝子治療学)