60代・70代からはじめる
フレイル予防・対策講座
高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!

監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生
06
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フレイル予防・対策講座
高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!
監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生
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フレイルと関連する栄養素のうち、不足するとそのリスクが最も高まると言われているのがビタミンDです(※1)。ビタミンDはカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫
にする働きがあることから、高齢者の骨粗しょう症との関連で注目されてきましたが、近年、筋肉の衰えを防ぐという面でも重要な役割を果たしていることがわかり、サルコペニアやフレイルの予防において注目されています。
筋肉にはビタミンDの受容体があり、ビタミンDと結合するとタンパク質の合成が促進されます。フレイルの予防・改善には筋力や筋肉量の維持・増加がカギとなりますが、ビタミンDは筋肉の増強に一役買っているのです。
フレイルと骨粗しょう症は非常に関連性が強く、骨粗しょう症による骨折は日常生活の動作の低下や寝たきりの状態を招き、フレイルを進行させる原因になります。ビタミンDをきちんと摂取することは、骨粗しょう症を予防し、骨折によるフレイルのリスクを軽減するだけでなく、筋肉の減少によるフレイルのリスク軽減にも有効なのです。
(※1)Bartali B, et al. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2006; 61 (6): 589-593, 2006
Yamada M, et al. of Aging Res & Clin Prac. 2012
出典:『寝たきりにならずにすむ筋肉の鍛え方』荒井秀典著 河出書房新社 P.132
日本人の食事摂取基準(2020年版)で推奨されているビタミンDの摂取量は、成人の場合、1日8.5µgです。ビタミンDは食べ物から摂るほかに、紫外線に当たることで私たちの皮膚でも作り出すことができます。適度に日光を浴びていればそれほど不足する栄養素ではありませんが、高齢になると室内にこもる時間が長くなり、日光を浴びる機会が減って結果的にビタミンDが不足している人は少なくありません。
どのくらい日光浴をすれば必要なビタミンDがまかなえるのかは、地域によって紫外線の量や日照時間などに差があり一概には言えませんが、国立環境研究所の調査(※2)によると、5.5µgのビタミンDの生成に必要な日照時間は次の通りとなっています。(皮膚面積600cm²を基準に算出。600cm²とは体重70kgの人の顔および両手の甲の面積に相当する)
どの地域でも日照時間の少なくなる冬場は要注意。しっかり日光を浴びることのほかに、普段の食事でも意識してビタミンDを含む食品の摂取を心がけましょう。
(※2)Miyauchi M, et al. J Nutr Sci Vitaminol 2013; 59(4):257-263.
ビタミンDを多く含む食品は限られていて、穀類、豆、イモ、野菜にはほとんど含まれていません。主な供給源は魚介類、卵類、きのこ類で、魚なら鮭、マイワシ、サンマ、うなぎ、カレイ、しらすなどに多く含まれています。きのこ類はきくらげや舞茸、エリンギ、干ししいたけに多く含まれます。きのこ類は紫外線に当たるとビタミンDが増えるので、乾燥でも生でも天日に干してから使うこともおすすめです。
また、ビタミンDは脂溶性のビタミンなので、脂ののった旬の魚を選んだり、油と一緒に調理すると効率よく摂取できます。ただしビタミンDのサプリメントによる摂りすぎには注意が必要です。ビタミンDの耐用上限量は成人で1日100µgです。
日本食品標準成分表2020年版(八訂)より算出