60代・70代からはじめる
フレイル予防・対策講座
高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!

監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生
05
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フレイル予防・対策講座
高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!
監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生
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野菜350g、果物200g。
これは厚生労働省や農林水産省が推進している、健康のために摂取するのが望ましい1日あたりの目標量です(※1)。
野菜や果物はビタミン、ミネラルといった栄養素の重要な供給源です。それだけでなく、食物繊維やポリフェノール、カロテノイドなどの機能性成分も含まれています。機能性成分は老化防止や生活習慣病予防、免疫力向上などに効果があると言われ、野菜や果物をきちんと摂ることは健康維持に欠かせません。
ところが実際の摂取量は、20代以上の全体平均で野菜280.5g、果物100.2gとなっており、目標にはまったく届いていないのが現状です(※2)。
(※1) 厚生労働省「健康日本21(第二次)」、厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」
(※2)令和元年国民健康・栄養調査の20歳以上の平均値
野菜や果物が足りていないと心配なのは、ビタミンやミネラル、食物繊維の不足です。国民健康・栄養調査のデータによると、日本人はビタミンAの5割以上を野菜から、ビタミンCは3割以上を果物から摂取しています。この2つの栄養素は、ビタミンEやポリフェノール等と並んで抗酸化作用があり、細胞老化や、心血管疾患などの生活習慣病の原因になり得る脂質の過酸化反応を抑制したり、「活性酸素」を無害化するのを助けたりする働きがあると言われています。
また、野菜や果物が主要な供給源となっているカリウムは高血圧の予防に、食物繊維は糖尿病や大腸ガンの予防などに役立ちます。(※3)
病気を防ぎ、健康を維持するために、野菜350g・果物200gの摂取を心がけたいものです。では実際どのくらいの量を食べたらよいのでしょうか。
その目安は次の通りです。
(※3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
(※4)厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」、農林水産省「野菜の1日の摂取目標『350g』とは」 をもとに作成
(※5)厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」、毎日くだもの200グラム推進全国協議会「毎日くだもの200グラム運動指針(9訂版)」 表3可食部200gを摂取するための目安数量
どの世代においても健康のために野菜や果物は欠かせませんが、近年、高齢者のフレイル予防にも野菜や果物の有効性を示唆する研究結果が報告されています。
マドリード大学の研究では、ヨーロッパの3つのコホート(※6)から抽出した高齢者約3000人を対象に平均追跡期間2.5年間でフレイルの発生状況を調べたところ、果物や野菜を1日1サービング以下しか食べないというグループに比べ、1日2サービング以上食べるグル―プでフレイルになるリスクが減っていたことが報告されています(1サービングとは、果物120g、野菜150gのこと)(※7)。
1sv = 果物120g、野菜150g/調整: BMI、喫煙歴、心血管疾患、糖尿病、がん、喘息・慢性気管支炎、骨関節炎、MMSE、うつ、服薬数、エネルギー摂取量
また、筋肉の量が減少したり、筋力が低下したりするサルコペニアは、フレイルを招く要因の一つです。野菜や果物に多く含まれるカロテノイド類やビタミン類の不足は、このサルコペニアの誘発原因になるとも考えられており(※8)、十分な果物・野菜の摂取はフレイルの予防においても大切なようです。
野菜の副菜を1品足す、果物は間食で補うなど、普段の食生活で少しずつ意識して野菜や果物を摂る習慣をつけましょう。
(※6)コホート…共通した因子を持ち、観察対象となる集団
(※7)Garcia-Esquinas E, et al. Am J Clin Nutr 2016; 104(1):132-142.
(※8)荒井秀典「世界のサルコペニア研究の最新知見」『日本食生活学会誌』第29巻第2号、2018年
毎日の食生活の中で野菜をたくさん摂るには、いつもの料理にプラスできるよう、使いやすい形にして保存をしておくと便利です。野菜は特別なものではなく、冷蔵庫にあるものでOK。余らせがちな野菜を使い切る技としても活用できます。
果物は丸のまま食べるのもよいですが、サラダにしたり、スムージーにしたりなど、一工夫加えることで、たくさんの種類と量をいただくことができます。
肉料理の付け合わせやオムレツの具、パンにのせて。そのまま野菜サラダ感覚でいただいてもOK。