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フレイル予防・対策講座

高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!

野菜と果物の写真

監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生

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野菜と果物は
足りていますか?

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日本人は野菜も果物も足りていない!

野菜350g、果物200g。
これは厚生労働省や農林水産省が推進している、健康のために摂取するのが望ましい1日あたりの目標量です(※1)。

野菜や果物はビタミン、ミネラルといった栄養素の重要な供給源です。それだけでなく、食物繊維やポリフェノール、カロテノイドなどの機能性成分も含まれています。機能性成分は老化防止や生活習慣病予防、免疫力向上などに効果があると言われ、野菜や果物をきちんと摂ることは健康維持に欠かせません。

ところが実際の摂取量は、20代以上の全体平均で野菜280.5g、果物100.2gとなっており、目標にはまったく届いていないのが現状です(※2)。

野菜と果物の摂取量

野菜と果物の摂取量野菜と果物の摂取量(※1) 厚生労働省「健康日本21(第二次)」、厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」
(※2)令和元年国民健康・栄養調査の20歳以上の平均値

野菜と果物はなぜ必要?

野菜や果物が足りていないと心配なのは、ビタミンやミネラル、食物繊維の不足です。国民健康・栄養調査のデータによると、日本人はビタミンAの5割以上を野菜から、ビタミンCは3割以上を果物から摂取しています。この2つの栄養素は、ビタミンEやポリフェノール等と並んで抗酸化作用があり、細胞老化や、心血管疾患などの生活習慣病の原因になり得る脂質の過酸化反応を抑制したり、「活性酸素」を無害化するのを助けたりする働きがあると言われています。

また、野菜や果物が主要な供給源となっているカリウムは高血圧の予防に、食物繊維は糖尿病や大腸ガンの予防などに役立ちます。(※3)

病気を防ぎ、健康を維持するために、野菜350g・果物200gの摂取を心がけたいものです。では実際どのくらいの量を食べたらよいのでしょうか。
その目安は次の通りです。

野菜350gの目安(下記のような組み合わせ)(※4)

野菜の組み合わせ|例 1

野菜の組み合わせ|例 1野菜の組み合わせ|例 1

野菜の組み合わせ|例 2

野菜の組み合わせ|例 2野菜の組み合わせ|例 2

果物200gの目安(※5)

果物200gの目安果物200gの目安(※3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
(※4)厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」、農林水産省「野菜の1日の摂取目標『350g』とは」 をもとに作成
(※5)厚生労働省・農林水産省「食事バランスガイド」、毎日くだもの200グラム推進全国協議会「毎日くだもの200グラム運動指針(9訂版)」 表3可食部200gを摂取するための目安数量

野菜、果物が果たすフレイル予防効果

どの世代においても健康のために野菜や果物は欠かせませんが、近年、高齢者のフレイル予防にも野菜や果物の有効性を示唆する研究結果が報告されています。

マドリード大学の研究では、ヨーロッパの3つのコホート(※6)から抽出した高齢者約3000人を対象に平均追跡期間2.5年間でフレイルの発生状況を調べたところ、果物や野菜を1日1サービング以下しか食べないというグループに比べ、1日2サービング以上食べるグル―プでフレイルになるリスクが減っていたことが報告されています(1サービングとは、果物120g、野菜150gのこと)(※7)。

フレイルのリスクを下げる食品群(※7)
果物・野菜の摂取量とフレイルのリスク

フレイルのリスクを下げる食品群(※7)フレイルのリスクを下げる食品群(※7)1sv = 果物120g、野菜150g/調整: BMI、喫煙歴、心血管疾患、糖尿病、がん、喘息・慢性気管支炎、骨関節炎、MMSE、うつ、服薬数、エネルギー摂取量

また、筋肉の量が減少したり、筋力が低下したりするサルコペニアは、フレイルを招く要因の一つです。野菜や果物に多く含まれるカロテノイド類やビタミン類の不足は、このサルコペニアの誘発原因になるとも考えられており(※8)、十分な果物・野菜の摂取はフレイルの予防においても大切なようです。

野菜の副菜を1品足す、果物は間食で補うなど、普段の食生活で少しずつ意識して野菜や果物を摂る習慣をつけましょう。
(※6)コホート…共通した因子を持ち、観察対象となる集団
(※7)Garcia-Esquinas E, et al. Am J Clin Nutr 2016; 104(1):132-142.
(※8)荒井秀典「世界のサルコペニア研究の最新知見」『日本食生活学会誌』第29巻第2号、2018年

野菜と果物を上手に摂るコツ

野菜編

毎日の食生活の中で野菜をたくさん摂るには、いつもの料理にプラスできるよう、使いやすい形にして保存をしておくと便利です。野菜は特別なものではなく、冷蔵庫にあるものでOK。余らせがちな野菜を使い切る技としても活用できます。

果物編

果物は丸のまま食べるのもよいですが、サラダにしたり、スムージーにしたりなど、一工夫加えることで、たくさんの種類と量をいただくことができます。

塩きゅうり

塩きゅうり写真

  1. 01.きゅうり4本(400g)はすりこ木などでたたき、ひびが入ったら端を切り落としておおまかに割る。
  2. 02.清潔な保存容器に水3カップと塩12g(2%塩分)を入れて塩を溶かし、1を加えて冷蔵庫で一晩おく。

● 作りやすい分量:
 4本分

● 保存の目安:
 冷蔵庫で3〜4日

アレンジレシピ塩きゅうりといかの炒め物

塩きゅうりといかの炒め物写真

  1. 01.塩きゅうりは水けをふく。しょうがは皮をむいてせん切りにする。いかは斜めに浅く5mm間隔の切り目を入れ、3cm角に切る。
  2. 02.フライパンに油としょうがを弱火で熱し、香りが立ったらいかを加えて中火にし、炒める。いかの色が変わったら塩きゅうりを加えてサッと炒め、酒と塩で味をととのえる。

材料(2人分)

  • 塩きゅうり3本分(300g)
  • いか(刺身用)80g
  • しょうが1/2かけ
  • 大さじ1
  • 大さじ1
  • 少量

フレッシュトマトソース

フレッシュトマトソース写真

  1. 01.トマト(完熟)4個(500g)はヘタをくり抜いて横半分に切る。種を除いて1cm角に切り、ボウルに入れる。
  2. 02.オリーブ油大さじ2、塩小さじ1、こしょう少量を加えて混ぜ合わせ、清潔な保存容器に入れる。

● 作りやすい分量:
 4個分

● 保存の目安:
 冷蔵庫で3〜4日

アレンジレシピアジのソテー フレッシュトマトソース

アジのソテー フレッシュトマトソース写真

  1. 01.あじは両面に塩、こしょうを振る。アスパラははかまを取り、長さを半分に切る。
  2. 02.フライパンに油大さじ1を入れて中火で熱し、アスパラを入れて1〜2分焼き、塩を振って取り出す。
  3. 03.あじに小麦粉を薄くまぶす。フライパンをサッと洗って水けをふき、油大さじ1を中火で熱し、あじを入れて2〜3分焼く。裏返して弱火にし、さらに2〜3分焼く。器に盛り、2を添えてトマトソースをかける。

材料(2人分)

  • あじ(3枚おろし)2尾分(160g)
  • A小さじ1/2強
  • Aこしょう少量
  • A小麦粉適量
  • グリーンアスパラガス6本(90g)
  • 大さじ2
  • 少量
  • フレッシュトマトソース150g

ゆで野菜のマリネ

ゆで野菜のマリネ写真

  1. 01.野菜やきのこはすべてほぼ同じくらいの大きさ(1cmの角切りなど)などにそろえて切る。
  2. 02.鍋に水6カップと、1の人参、じゃが芋を入れて中火にかけ、煮立ったら弱めの中火にし、5分ほどゆでる。塩小さじ1とキャベツ以外の野菜を加え、再び煮立ったらさらに4〜5分ゆでる。最後にキャベツを加えて1〜2分ゆで、ザルにあげて湯をよくきる。
  3. 03.ボウルに2を入れ、Aを加えて混ぜ合わせる。

材料(作りやすい分量)

  • 野菜・きのこなど600~700g
  • ここでは以下の野菜を使用(お好みでOK)
  • 人参1本(130g)
  • じゃが芋1個(130g)
  • 玉ねぎ小1個(120g)
  • 茄子1本(70g)
  • セロリ1本(70g)
  • 生椎茸2個(30g)
  • キャベツ80g
  • さやいんげん50g
  • 小さじ1
  • Aオリーブ油大さじ4
  • A小さじ2/3
  • Aこしょう少量
● 保存の目安:
 冷蔵庫で5〜6日

アレンジレシピ目玉焼き 野菜のマリネ添え

目玉焼き 野菜のマリネ添え写真

肉料理の付け合わせやオムレツの具、パンにのせて。そのまま野菜サラダ感覚でいただいてもOK。

フルーツたっぷりのサラダ

フルーツたっぷりのサラダ写真

  1. 01.りんごは皮つきのままいちょう切りにする。オレンジは房から実を取り出し、半分に切る。キウイはりんごと同じ大きさのいちょう切りにする。レタスは食べやすい大きさにちぎる。
  2. 02.人参はすりおろし、りんご酢、サラダ油、はちみつ、塩、こしょうを加えて混ぜ合わせ、ドレッシングを作る。器にレタスを敷き、りんご、キウイ、オレンジを盛りつけ、ドレッシングをかける。

材料(2人分)

  • りんご40g
  • オレンジ(皮をむいたもの)40g
  • キウイ40g
  • レタス20g
  • A人参20g
  • Aりんご酢大さじ1強
  • A小さじ1
  • Aはちみつ小さじ1/2強
  • A0.40g
  • Aこしょう少々

ブルーベリーとセロリと豆乳のスムージー

ブルーベリーとセロリと豆乳のスムージー写真

  1. 01.セロリは筋を取り、ひと口大に切る。
  2. 02.氷、1、ブルーベリー、豆乳、メープルシロップをミキサーに入れ、かくはんする。

材料(2人分)

  • セロリ80g
  • ブルーベリー120g
  • 豆乳(無調整豆乳)120g
  • メープルシロップ小さじ2
  • 50g