60代・70代からはじめる
フレイル予防・対策講座
高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!

監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生
02
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フレイル予防・対策講座
高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!
監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
国立長寿医療研究センター 研究所 老年学・社会科学研究センター フレイル研究部
研究員 木下かほり先生
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近年、高齢者の低栄養が取り上げられるようになってきました。低栄養とは、食事から摂るエネルギーやタンパク質等が不足している状態のことをいいます。令和元年の国民健康・栄養調査結果では、65歳以上の方では男性の12.4%、女性の20.7%が低栄養の傾向にあると報告されています。
低栄養はフレイルの原因です。フレイルは、
1)6ヶ月間で2kg以上の体重減少
2)握力が男性で28kg以下、女性で18kg以下
3)(ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする
4)通常歩行速度が毎秒1m以下
5)軽い運動・体操もしくは定期的な運動・スポーツを週に1回以上していない
これらのうち、3つ以上に当てはまる状態です。低栄養の状態が続くと、体に蓄えている脂肪や筋肉を分解し、エネルギーに変えてしまいます。すると体重が減少し、筋肉量も減るため筋力が低下します。筋力が低下すると疲れやすくなり、活動性も低下するなど悪循環を引き起こし、フレイルを招いてしまうのです。
※サルコペニア肥満の方(BMI値30以上)は、体重を増やさないような食事制限と運動が必要です。
ではエネルギーやタンパク質さえ不足しなければ大丈夫か、というとそうではありません。栄養素には炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルがあります。これらは体の中で働くときの役割が違うので、バランスのとれた食事からいろいろな栄養素を補うことは、いきいきとした生活を送るためにも欠かせません。
多様な食品がとれているかどうかの指標として「食品摂取の多様性スコア」があります。下の表の10種類の食品をほぼ毎日食べる場合は1点、そうでない場合は0点で計算し、合計点が高いほど栄養素密度の高い食事になる傾向があります。また、近年では、いきいきとした老後を過ごすために「サルコペニア(※1)(筋肉量が減少し、握力や歩行速度が低下した状態)」を予防することが重要とされています。食品摂取の多様性スコアが7点以上の人は、筋肉量が減少しにくいことや、握力や歩行速度が低下しにくいことが報告されているため(※2)、多様な食品を摂ることはサルコペニアの予防にも重要な可能性があります。
ふだんの自分の食生活を振り返り、偏りがないかチェックしてみましょう。
出典:東京都健康長寿医療センター研究所
※1. Chen LK, et al. J Am Med Dir Assoc 2014; 15(2):95-101
参考:「フレイルの要因」
※2. Yokoyama Y, et al. Dietary Variety and Decline in Lean Mass and Physical Performance in Community-Dwelling Older Japanese: A 4-year Follow-Up Study. J Nutr Health Aging 2017; 21(1):11-16.
これらの他に、牛乳・乳製品(タンパク質)、果物(ビタミン・ミネラル)から栄養を補いましょう。
1日の目安は、牛乳コップ1杯程度、果物は握りこぶし1個程度です。タンパク質が不足しがちな朝食や昼食に牛乳や乳製品を取り入れることで、手軽にタンパク質を補うことができます。
※糖尿病や腎臓病などで栄養管理をなさっている方は、主治医の先生や管理栄養士にご相談ください。
多様な食品をバランスよく食べるには、主食(ご飯・めん・パン)、主菜(肉・魚・卵・大豆)、副菜(野菜・海藻・きのこ)を毎回の食事に取り入れることがポイントです。しかし、いろいろなおかずが盛りつけられた器が食卓にずらりと並ぶと、「食べなければならない」というプレッシャーを感じて、かえって、食欲がわかないことになるかもしれません。
そこでおすすめしたいのが、1つのお皿に主食、主菜、副菜を盛りつけるワンプレートごはんです。1皿にまとめることで食べきりやすくなるだけでなく、食品のバランスが把握しやすい、洗い物が少なくて済むなどのメリットがあります。
主食、主菜、副菜の3つを意識して、作りおきの常備菜や、市販のお惣菜、豆腐やチーズ、卵、納豆などそのまま食べられるものをバランスよく一皿に盛り合わせて、低栄養にならない食事習慣を身につけましょう。
※サルコペニア肥満の方(BMI値30以上)は、体重を増やさないような食事制限と運動が必要です。ここでは、低栄養のために体重減少傾向がみられる方に向けた情報とレシピを紹介しています。