胃がん患者さんの
仕事や生活、食生活のポイントを解説します。
目次
胃がんと仕事、生活
胃がんの治療が始まると、仕事や家事、学業などの日常生活に広く影響が出て、それまでと同じ生活を続けることが難しくなることもあります。治療を始めるまでの間に、自分がどのような治療を受けるのか、生活にどのような影響が考えられるのかを事前に調べて、早めに対策して準備を進めておくことが大切です。
中でも、治療費がどのくらいかかるのか、不安になる患者さんも多いことでしょう。胃がん治療にかかる費用は、治療法や入院期間、治療を続ける期間、薬物療法の種類などによって大きく幅があります。治療は長期にわたることも多いので、費用がどれくらいかかるのかを知り、事前にしっかりと準備をしておくと、安心して療養生活を続けることができるようになります。
公的な医療費の助成制度や生活への支援制度もありますので、医療機関や自治体の相談窓口に問い合わせてみましょう。
いつ仕事に復帰できるのか不安に感じている患者さんも多いのではないでしょうか。しかし、胃がんを治療し退院された後、復職している患者さんもたくさんいらっしゃいます。
復職には術後の食事に慣れ、体力が回復し、仕事への意欲が湧いてきてからが理想的です。手術の方法や体力の回復時期には個人差があり、仕事の内容や、術後補助化学療法の有無によっても復職の時期は変わってきますので、主治医とよく相談して判断しましょう。
また、復職後は毎日の疲れや精神的ストレスがたまらないように、ご家族や職場の人たちの理解や協力を得ておくことも重要です。
再発・転移を早期に
見つけるために定期検診を
手術で取り除いたように見えても、がんが再び現れたりすることを「再発」と呼びます。「転移」とは、がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパに入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器や器官に移動して増えることをいいます。(がん細胞が最初に発生した場所から離れた臓器や器官に転移することも「再発」に含まれます。)
胃がんは手術から3~5年以内に再発することが多いといわれています。その後、再発は徐々に減り、術後5年以降に再発することは少なくなるといわれています。
しかし、残念ながら胃がんは再発すると、既にがんが別の臓器や器官に広がっている可能性が高く、再手術して完治を目指すのは難しくなります。なお、再発した後の治療は薬物療法が中心になります。また、薬物療法のほか、症状を軽減する緩和ケアを行います。特に手術から5年間は、忘れずに定期検診を受けることが大切です。
胃がん患者さんの食生活
胃がん治療が食生活に与える影響は、患者さんの病状をはじめ、内視鏡治療や胃切除術、薬物療法など受けた治療の内容によって変わります。
治療によっては体にさまざまな変化が生じ、食生活に大きな影響が出ることがあります。ここでは、胃がんのステージ別に、治療後の食生活で気をつけるべきポイントを解説します。
《ステージⅠ》
《ステージⅡ、Ⅲ》
胃の手術を受けたら食事はどうなるのか、不安に感じる患者さんも多いのではないでしょうか。胃をすべて切除しても、腸には食べ物の消化や吸収する能力があるため、全く食べられなくなるということはありません。ただし、腸には食べたものをためることができないため、一度にたくさんの食べ物を処理できません。そのため、少しずつ、回数を多くして食べるなどの工夫が必要です。工夫をすれば、食事をおいしく、楽しむことができるようになります。
食事は、患者さんの症状に合わせた対応が必要です。そのため、患者さん以外のご家族の食事は患者さんに合わせるか、別々に対応することが望ましいです。その上で、食事は「無理せず」「おいしく、楽しく」を基本に、調理や盛りつけにひと工夫したり 、ご家族と食卓を囲んだり、患者さんが少しでも食べられるような環境を整えていけるとよいでしょう。最近は、おかゆのレトルトなども販売されており、手軽に入手できるため、それらを活用するのも一案です。
《ステージⅣ》
体力を落とさないように、現在の体の状態を少しでも長く保ち続けていくためにも、無理は禁物ですが、少しずつでも食べられるようにしていきましょう。
患者さんの病状に応じた食べ方や調理法については、看護師や栄養士に相談するのもお勧めです。
総合監修
利野 靖先生
横浜市立大学附属病院 消化器・一般外科 診療教授
学歴/職歴