background1 img7

胃がん患者さんの

仕事・生活・食生活

仕事や生活、食生活のポイントを解説します。

目次

総合監修

avatar1

横浜市立大学附属病院 消化器・一般外科 診療教授

利野 靖先生

詳細を見る
01

胃がんと仕事、生活

胃がんの治療が始まると、仕事や家事、学業などの日常生活に広く影響が出て、それまでと同じ生活を続けることが難しくなることもあります。治療を始めるまでの間に、自分がどのような治療を受けるのか、生活にどのような影響が考えられるのかを事前に調べて、早めに対策して準備を進めておくことが大切です。

中でも、治療費がどのくらいかかるのか、不安になる患者さんも多いことでしょう。胃がん治療にかかる費用は、治療法や入院期間、治療を続ける期間、薬物療法の種類などによって大きく幅があります。治療は長期にわたることも多いので、費用がどれくらいかかるのかを知り、事前にしっかりと準備をしておくと、安心して療養生活を続けることができるようになります。

公的な医療費の助成制度や生活への支援制度もありますので、医療機関や自治体の相談窓口に問い合わせてみましょう。

いつ仕事に復帰できるのか不安に感じている患者さんも多いのではないでしょうか。しかし、胃がんを治療し退院された後、復職している患者さんもたくさんいらっしゃいます。
復職には術後の食事に慣れ、体力が回復し、仕事への意欲が湧いてきてからが理想的です。手術の方法や体力の回復時期には個人差があり、仕事の内容や、術後補助化学療法の有無によっても復職の時期は変わってきますので、主治医とよく相談して判断しましょう。
また、復職後は毎日の疲れや精神的ストレスがたまらないように、ご家族や職場の人たちの理解や協力を得ておくことも重要です。

01

再発・転移を早期に
見つけるために定期検診を

手術で取り除いたように見えても、がんが再び現れたりすることを「再発」と呼びます。「転移」とは、がん細胞が最初に発生した場所から、血管やリンパに入り込み、血液やリンパの流れに乗って別の臓器や器官に移動して増えることをいいます。(がん細胞が最初に発生した場所から離れた臓器や器官に転移することも「再発」に含まれます。)

胃がんは手術から3~5年以内に再発することが多いといわれています。その後、再発は徐々に減り、術後5年以降に再発することは少なくなるといわれています。

しかし、残念ながら胃がんは再発すると、既にがんが別の臓器や器官に広がっている可能性が高く、再手術して完治を目指すのは難しくなります。なお、再発した後の治療は薬物療法が中心になります。また、薬物療法のほか、症状を軽減する緩和ケアを行います。特に手術から5年間は、忘れずに定期検診を受けることが大切です。

01

胃がん患者さんの食生活

胃がん治療が食生活に与える影響は、患者さんの病状をはじめ、内視鏡治療や胃切除術、薬物療法など受けた治療の内容によって変わります。

治療によっては体にさまざまな変化が生じ、食生活に大きな影響が出ることがあります。ここでは、胃がんのステージ別に、治療後の食生活で気をつけるべきポイントを解説します。

《ステージⅠ》

治療方法は、内視鏡で粘膜切除のみを行う場合と手術で胃を切除する場合があります。
内視鏡治療は体を傷つけることが少なく、治療後は数日で食事ができるようになります。治療で切除した部分に潰瘍(かいよう)ができるため、術後1~2か月は注意が必要ですが、回復は早く、食生活への影響はほとんどありません。
手術で胃を切除する場合は、体にさまざまな不調が起こります。例えば、胃が小さくなることで、一度に食べられる量が減るため、多くの患者さんが「すぐにお腹がいっぱいになってしまう」「食べたくても食べられない」といった違和感をもたれるようです。

《ステージⅡ、Ⅲ》

胃切除術後には、胃が小さくなったり、胃をすべて切除してしまったりしたことで、体にさまざまな不調が起こります。
ステージⅠと同様に、胃が小さくなり、一度に食べられる量が減るため、「すぐにお腹がいっぱいになってしまう」「食べたくても食べられない」といった違和感がある患者さんも多いようです。
術後数か月も経つと、体が術後の変化に慣れてくる患者さんもいますが、なかなか食欲が回復しない患者さんもいます。
また、治療開始前から食事摂取が進まない患者さんもいます。その場合、医療機関によっては、お腹に小さな穴を開けて小腸までカテーテル(管)を通し、そこから栄養をとる「腸瘻(ちょうろう)」をつくり、栄養障害の予防を行うこともあります。口から食事をとることが困難な患者さんに、「胃瘻(いろう)」という栄養を投与する方法と同じですが、胃がんの患者さんでは胃を切除しているため、小腸にカテーテルを入れて行います。食事がとれるようになれば、外来ですぐにカテーテルを抜くことができ、入浴もできるようになります。

治療後でも、食事はおいしく楽しむことができるようになります。

胃の手術を受けたら食事はどうなるのか、不安に感じる患者さんも多いのではないでしょうか。胃をすべて切除しても、腸には食べ物の消化や吸収する能力があるため、全く食べられなくなるということはありません。ただし、腸には食べたものをためることができないため、一度にたくさんの食べ物を処理できません。そのため、少しずつ、回数を多くして食べるなどの工夫が必要です。工夫をすれば、食事をおいしく、楽しむことができるようになります。

胃切除術後の食べ方のポイントをまとめました。ご参考ください。

胃切除術後の食べ方のポイント

1術後しばらくは消化のよいものを

特に食べてはいけないものの制限はありません。硬い食材は柔らかく煮込むなど調理法を工夫すれば、ほぼ何でも食べられま
すし、ご家族との食事も楽しむことができます。

1
術後しばらくは消化のよいものを

特に食べてはいけないものの制限はありません。硬い食材は柔らかく煮込むなど調理法を工夫すれば、ほぼ何でも食べられま すし、ご家族との食事も楽しむことができます。

2少しずつ、何回かに分けて

胃が小さくなり1回に食べる量が少なくなるため、朝昼晩3食と間食を2~3回、合わせて5~6回を目安にしてください。

2
少しずつ、何回かに分けて

胃が小さくなり1回に食べる量が少なくなるため、朝昼晩3食と間食を2~3回、合わせて5~6回を目安にしてください。

3食事は毎日、同じ時間に

規則正しい時間に食事をとることで、胃腸の調子が整いやすくなり、排便リズムが安定して便通もよくなることがあります。

3
食事は毎日、同じ時間に

規則正しい時間に食事をとることで、胃腸の調子が整いやすくなり、排便リズムが安定して便通もよくなることがあります。

4ゆっくりと、よく噛んで

少しでも消化をよくしていくために、ゆっくりと、よく噛んで食べましょう。

4
ゆっくりと、よく噛んで

少しでも消化をよくしていくために、ゆっくりと、よく噛んで食べましょう。

5栄養バランスのよい食事を

1回に食べられる量は減りますが、栄養が偏らないようにバランスを考えた食事をとりましょう。

胃を切除すると不足しがちなカルシウム、鉄分、ビタミンB12に気をつけましょう。

また、ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性ビタミンが不足する場合もあります。ビタミン Eが減少すると神経障害が、ビタミ
ンAが不足すると皮膚障害が起こることが知られています。

5
栄養バランスのよい食事を

1回に食べられる量は減りますが、栄養が偏らないようにバランスを考えた食事をとりましょう。

胃を切除すると不足しがちなカルシウム、鉄分、ビタミンB12に気をつけましょう。

また、ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性ビタミンが不足する場合もあります。ビタミン Eが減少すると神経障害が、ビタミ ンAが不足すると皮膚障害が起こることが知られています。

6 食事の内容や量は体の調子に合わせて

術後しばらくすると体が術後の変化に慣れてきます。無理に食べようとせず、その変化に合わせて食事の内容や量は段階的
に進めていくとよいでしょう。

6
食事の内容や量は体の調子に合わせて

術後しばらくすると体が術後の変化に慣れてきます。無理に食べようとせず、その変化に合わせて食事の内容や量は段階的 に進めていくとよいでしょう。

7食間はこまめな水分補給を

食事の間は、水は少しずつ飲みましょう。胃がんの手術後は食事の量が減るため、飲水量も減ってしまうことが多いです。しかし、一度頑張って水を飲むようにすると、飲めるようになる患者さんも多いです。あきらめずに飲水量を増やしましょう。

7
食間はこまめな水分補給を

食事の間は、水は少しずつ飲みましょう。胃がんの手術後は食事の量が減るため、飲水量も減ってしまうことが多いです。し かし、一度頑張って水を飲むようにすると、飲めるようになる患者さんも多いです。あきらめずに飲水量を増やしましょう。

8刺激物やアルコールは控えましょう

8
刺激物やアルコールは控えましょう

9食べたらすぐに横にならない

食べてすぐ横になると、逆流が起こるので避けましょう。

9
食べたらすぐに横にならない

食べてすぐ横になると、逆流が起こるので避けましょう。

食事は、患者さんの症状に合わせた対応が必要です。そのため、患者さん以外のご家族の食事は患者さんに合わせるか、別々に対応することが望ましいです。その上で、食事は「無理せず」「おいしく、楽しく」を基本に、調理や盛りつけにひと工夫したり 、ご家族と食卓を囲んだり、患者さんが少しでも食べられるような環境を整えていけるとよいでしょう。最近は、おかゆのレトルトなども販売されており、手軽に入手できるため、それらを活用するのも一案です。

《ステージⅣ》

ステージⅣでは、薬物療法や放射線療法がおこなわれます。薬物療法や放射線療法中にも、悪心(おしん)や嘔吐、食欲不振、下痢、口内炎などの副作用に注意が必要です。
薬物療法や放射線療法中の食べ方のポイント

体力を落とさないように、現在の体の状態を少しでも長く保ち続けていくためにも、無理は禁物ですが、少しずつでも食べられるようにしていきましょう。
患者さんの病状に応じた食べ方や調理法については、看護師や栄養士に相談するのもお勧めです。

avatar7

総合監修

利野 靖先生

横浜市立大学附属病院 消化器・一般外科 診療教授

学歴/職歴

1985年3月
横浜市立大学医学部卒業
1985年6月
横浜市立大学医学部附属病院研修医
1987年6月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科常勤特別職
1988年6月
関連施設で研修
1993年6月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科助手
1999年4月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科講師
2000年9月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科講師兼臨床部長
2005年1月
横浜市立大学附属病院一般外科部長兼第一外科講師
2007年4月
横浜市立大学附属病院一般外科部長兼外科治療学准教授
2016年4月
横浜市立大学附属病院一般外科臨床教授兼外科治療学准教授
2019年2月
横浜市立大学附属病院消化器・一般外科診療教授兼外科治療学准教授、
消化器・一般外科部長、呼吸器外科部長、乳腺・甲状腺外科部長