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胃がん患者さん
全般によくみられる
症状別レシピ

総合監修

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横浜市立大学附属病院 消化器・一般外科 診療教授

利野 靖先生

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栄養指導・食事監修

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淑徳大学
看護栄養学部 栄養学科 教授

桑原 節子先生

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胃がん治療中の
食事と生活

自分の体調変化を理解することが第一歩

胃がんの治療中には様々な症状が現れます。手術後の後遺症を予防し、不快な症状が起こったら少しでも軽減できるよう、事前に対策や工夫について知っておくことは安心につながります。
下の図表は、胃がんの治療中によくみられる症状の例です。まずはどのような体調の変化が起こるのかを知り、理解しておくことが大切です。

一般的によくみられる胃がん治療中の症状

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(※)ダンピング症候群
食べたものが胃を切除したことで未消化のまま急に腸に流れ込み、それによって様々な苦しい症状が起こること。

胃がん患者さんの食事の基本的な考え方

治療の効果を高めるためには、必要な栄養素をしっかり摂り、体力を維持し、全身状態を安定させることが鍵となります。まずは1日に必要なエネルギー量とたんぱく質をしっかりと確保しましょう。エネルギーやたんぱく質が不足していると、ビタミンやミネラルをいくら摂取してもその効果は半減してしまいます。
1日に必要なエネルギー量の目安は、簡易的に標準体重(kg)×30~35kcalで求めることができます。活動量が低めの方や標準体重に近い方は30kcal/kg、十分活動量がある方や標準体重より10%以上少ない方は35kcal/kgで計算します。胃切除後の場合は25~30kcal/kgを目安にするとよいでしょう。

活動量が低めの方・・・部屋で過ごすことが多い、近所での買い物程度 
十分活動量がある方・・・通勤を伴う仕事をしている、毎日運動をしている

がん患者さんのエネルギー目安量

標準体重(kg) 身長(m) × 身長(m) × 22

1日に必要なエネルギー量の目安=
標準体重×30~35kcal

例)身長が160㎝(1.6m)の方の場合 1.6×1.6×22≒56.3 56.3×30~35≒1690~1970kcalが必要なエネルギー量の目安

たんぱく質の必要量の目安は、体重1kgあたり1~1.5gです。体重60kgの方なら、60×1~1.5gで60~90g。魚、肉、卵、豆、乳製品などたんぱく質を多く含む食品は、毎回の食事できちんととるようにしましょう。そのほか、鉄、カルシウム、ビタミンD、亜鉛、ビタミンB12などは治療中に起こる様々な不調の改善や予防に役立つので、積極的に摂りたい栄養素です。

参考:公益財団法人 がん研究振興財団「改訂版 がん治療と食生活」p2-4

病院での栄養相談はご家族も一緒に

栄養補給が大事だからと、体調のすぐれないときに無理に食事をすすめるのは患者さんの負担になります。ご家族や周囲の方は、「本人の意思を尊重し、見守ることも支援の一つである」と理解しましょう。

最近は外科手術をした後の入院期間が短くなり、退院後はご自身の回復状況に合わせて患者さん本人が自分の食事のあり方を探っていくことが必要になります。どういう点に注意しなくてはいけないのか、これまでと同じようにいかないことはどんなことなのか、患者さん本人だけでなく同居するご家族の方も理解しておくと患者さんの負担軽減につながります。病院での栄養相談は、ぜひご家族の方も一緒に受けられるとよいでしょう。

症状別レシピ

①体重減少→体力低下→食欲不振

胃がん治療中の患者さんに最もよくみられる症状は、体重減少と食欲不振です。特に体重減少は胃を切除した方の9割にみられ、10~15%ほど体重が減ってそのまま元に戻らないというケースが少なくありません。胃切除術によって胃が小さくなり、今まで通りの量が食べられなくなったり、胃から出る食欲刺激ホルモンの量が低下し、食欲不振に陥ったりなど、要因は様々です。

また、薬物療法中の方は、食欲不振から体重が低下してしまう人が多くみられます。体がやせると体力が落ちて動くのが負担になり、活動量が下がります。すると食欲がわかず、体重はさらに減少してますます体力が衰えるという悪循環に。体力を維持し、抵抗力を保つことは治療効果を得るためにも重要です。体重減少を防ぐ食べ方のコツや、食欲不振をうまく乗り切る工夫を知り、この悪循環に陥らないようにしましょう。

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参考:公益財団法人 がん研究振興財団「がん治療中の食事サポートブック2020」p10,14

\ 胃切除術後の食事のポイント /

1

1日3食を5~6回に分ける

胃を切除した後は一度に食べられる量は少なくなります。無理に食べようとすると逆効果になるので、1日3食を5~6回に分けて食べたり、間食を2回とるなど無理なく少量ずつ食べるようにします。

2

よく噛む

胃を切除したからといって食べてはいけないものはありませんが、胃切除後は胃酸や消化酵素の分泌が減少し、食べ物の消化吸収が悪くなりますので、食べ方には注意が必要です。胃や小腸の働きを助けるためにも、よく噛んで食べることが大切。また、長い麺類など、すすりながら食べると空気を一緒に口から吸いこむことになる料理も消化不良が起こりやすくなるので、あらかじめ短く切っておくなどの工夫も必要です。

3

水分補給は食事と食事の間に

術後は流動食やおかゆなどがいいのではと思われがちですが、水分が多いとすぐにお腹がいっぱいになってしまい、必要な栄養が摂りにくくなってしまいます。固形物を少しずつよく噛んで食べるようにし、水分は食事と食事の間にとるようにしましょう。

4

食べてすぐ横にならない

胃の一部が残る手術をした方は、食事のあと横になるのは避け、座っているか、軽く散歩するなどして、食べ物が重力に従って流れやすい状態をつくるようにしましょう。
※ただし、胃を全部切除した場合は、食物が急に小腸に流れ込むことでダンピング症状が起こることがあり、このような症状がある方は、食後しばらく横になっていたほうがよい場合もあります。

5

食べたいもの、気持ちが向くものを

主食や主菜といった食事形式にとらわれず、好きなものを無理のない範囲で食べましょう。症状の出方は人それぞれです。食べた後に不快感がないかどうか、体調を見ながら自分に合った食べ方を探っていきましょう。

参考:「胃がん治療ガイドラインの解説 一般用2004年12月改訂」日本胃癌学会編 p65-66

おすすめレシピ

やわらかうどん

うどんと野菜はあらかじめ細かく切って煮込みます。栄養バランスが良く、胃腸にもやさしいので安心して食べられます。

ひとくちおにぎり

術後の食事は少量頻回がポイント。小ぶりのおにぎりは、間食などでちょっと食べるのにぴったりです。

フレンチトースト

卵と牛乳でたんぱく質をプラス。お好みでジャムやメープルシロップなどを足せばエネルギーもUP。

\ 薬物療法中の食事のポイント /

1

「食事」という観念にとらわれない

薬物療法中の方の食欲不振は一時的な場合が多く、心配しすぎる必要はありません。「食事」という観念にとらわれず、気分の良い時に食べられそうなものを無理のない程度で食べてみる、といった程度に気楽に考えましょう。

2

自分の好みを探す

どんな味のものが食べやすいと感じるのかは、患者さん一人一人異なります。さっぱりした味か濃い味か、冷たいものか熱いものか、自分の好みに合うものを探してみましょう。水分の多い果物やシャーベット、アイスクリームなどは比較的好まれるようです。

3

量は少なく、品数は多く

1つの料理の盛りつけ量が多いと、それだけで負担に感じることも。いろんなおかずを小さい器に少量ずつ盛りつけて品数を増やすと、見た目もよくなり食欲も刺激されます。

4

主食に変化を

麺やパン、酢飯などは、白米やおかゆよりも比較的食べやすいという方が多いようです。主食も2種類くらい用意し、その時の気分に合わせて選べると食が進みやすくなるかもしれません。

参考:公益財団法人 がん研究振興財団「がん治療中の食事サポートブック2020」p10

おすすめレシピ

椿ずし(てまりずし)

コロンと可愛いひとくちサイズのおすし。具材はお好みのものを彩りよくのせて、見た目も鮮やかに。

オレンジとしょうがの
シャーベット

オレンジを生のまま切って冷凍することで、フレッシュな果物の味を味わえます。

そうめんとトロッとつゆ

つゆに長芋と豆乳を使って栄養価UP。のどごしが良く、食欲のないときにも食べやすい一品。

②便秘・下痢

胃がん治療中は食べる量が減ったり、精神的ストレスなどで便通が安定せず、便秘や下痢を起こしやすくなります。便秘が続くと腸閉塞の原因にもなり、下痢が続くと栄養素の吸収が妨げられ、体重減少につながります。症状に合わせて適切な食事を心がけましょう。

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\ 便秘の時の食事のポイント /

1

穀類や野菜など適度な食物繊維をとる

2

こまめな水分補給を心がける

3

ヨーグルトなど乳酸菌を含む食品をとり、腸内環境を整える

\ 下痢の時の食事のポイント /

1

香辛料や脂肪を多く含む食品、濃い味つけの料理は控えめに

2

海藻類やきのこ、ごぼうなど食物繊維の多い食品や消化しにくい食品は避ける

3

アルコールや炭酸飲料は控える

4

常温か人肌程度のほうじ茶、麦茶、イオン飲料をこまめにとる

参考:国立がん研究センター「がん情報サービス『下痢』」
公益財団法人 がん研究振興財団「がん治療中の食事サポートブック2020」p34, 36-37

おすすめレシピ

小芋のおかゆ

里芋と一緒にコトコト炊き込んだおかゆ。里芋に含まれる水溶性の食物繊維は腸の働きを整えてくれます。

バナナとりんごのヨーグルト

整腸作用があるヨーグルトと、食物繊維の豊富なバナナとりんごを合わせた一品。

人参の豆乳ポタージュ

消化がよく、お腹にやさしい温かい野菜スープ。

イオン飲料ゼリー

脱水状態の予防におすすめ。一気に食べると体を冷やすので、少しずつゆっくりと口に含むようにしましょう。

③味覚障害

治療中や治療後に味覚や嗅覚が変化することがあります。味を感じなくなる、あるいは薄く感じる、濃く感じる、何も食べていないのに口の中が甘い、すべてが嫌な味に感じるなど、人によって症状の出方は様々です。

抗がん剤などの影響によるもののほか、食事の摂取量が不足し、亜鉛や鉄が欠乏することも一因となります。

\ 味覚障害がある時の食事のポイント /

1

塩味やしょうゆ味が苦く感じる、金属のような味がする場合

  • 柑橘類などで味覚を刺激し、唾液を出しやすくする
  • ごま、みそ、酢などを料理に使う
  • 肉の赤身より、鶏肉や卵、乳製品などを
2

甘みを強く感じる場合

  • 甘味調味料は控え、塩、しょうゆ、みそなどで少し濃いめの味つけに
  • レモンや酢、スパイスなどを利用する
3

全く味を感じない場合

  • しっかりとした味つけにする
  • 料理は人肌程度の温度にする
4

苦く感じる場合

  • だしをきかせる(卵豆腐や茶椀蒸しは食べやすい傾向にある)
  • 飴などで口直しする
  • 薬味やスパイスを利用する
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参考:国立がん研究センター「がん情報サービス『味覚やにおいの変化』」
公益財団法人 がん研究振興財団「がん治療中の食事サポートブック2020」p44-46

おすすめレシピ

塩レモンのフルーツサラダ

塩レモンをドレッシングに混ぜてさわやかな香りのサラダに。塩レモンは作り置きしておくと、いろいろな料理に使えて便利です。

茶碗蒸し

だしの風味豊かな、口当たりのよい一品。具はお好みでアレンジしたり、冷やしていただいても◎。

薬味たっぷりぶっかけうどん

ごま、ねぎ、しょうがなどの薬味とすだちの香りで食べやすく仕上げます。

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総合監修

利野 靖先生

横浜市立大学附属病院 消化器・一般外科 診療教授

学歴/職歴

1985年3月
横浜市立大学医学部卒業
1985年6月
横浜市立大学医学部附属病院研修医
1987年6月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科常勤特別職
1988年6月
関連施設で研修
1993年6月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科助手
1999年4月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科講師
2000年9月
横浜市立大学医学部附属病院第一外科講師兼臨床部長
2005年1月
横浜市立大学附属病院一般外科部長兼第一外科講師
2007年4月
横浜市立大学附属病院一般外科部長兼外科治療学准教授
2016年4月
横浜市立大学附属病院一般外科臨床教授兼外科治療学准教授
2019年2月
横浜市立大学附属病院消化器・一般外科診療教授兼外科治療学准教授、
消化器・一般外科部長、呼吸器外科部長、乳腺・甲状腺外科部長
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栄養指導・食事監修

桑原 節子教授

淑徳大学 看護栄養学部 栄養学科

学歴/職歴

1980年
女子栄養大学栄養学部実践栄養学科卒業
1980年~2013年
7施設の国立病院機構病院にて勤務、病院マネジメントを実施
2003年より
国立がん研究センター中央病院・栄養管理室長
2007年から3年間
厚生労働省医政局政策医療課栄養専門官を併任
2013年より
現職