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フレイル予防・対策講座

高齢者の低栄養防止やフレイル予防対策に!

ご飯を食べている写真

監修:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター
理事長 荒井秀典先生
老年学・社会科学研究センターフレイル研究部 特任研究員 木下かほり先生

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噛む力を鍛えよう!
オーラルフレイルの予防と対策

バックナンバー

些細な口の衰えがフレイルを招く

滑舌が悪くなる、固いものが噛めない、食べこぼしたりむせたりすることが増えた…。高齢になるとよく見られる現象です。一見なんでもないように感じられる些細な口の機能の衰えですが、近年「オーラルフレイル」と呼ばれ、注目されています。

噛む力が弱くなると摂取する食品のバリエーションが減り、食事のバランスが偏りやすくなります。食事の楽しみも減り、食欲の低下につながるなど、低栄養のリスクが高まります。慢性的な低栄養はフレイルの原因となるため、オーラルフレイルはフレイルを加速させる因子のひとつと言われています。

また、滑舌が悪くなると他人とのコミュニケーションに支障をきたすようになり、人と会ったり外出したりすることが億劫になり、高齢者のQOLにも大きく影響します。オーラルフレイルを予防、改善することが健康寿命を延ばす大きな鍵となるのです。

些細な口の衰えがフレイルを招く

自覚しにくいオーラルフレイル

フレイルを予防するにはオーラルフレイルの段階で気づき、適切な対処をすることが重要です。しかし、こうした些細な口の衰えは日々少しずつ進行していくため気づきにくく、放置されて悪化しがちです。次の問診票(※1)で3点以上の「危険性あり」となった人は早めに専門家に相談しましょう。

オーラルフレイルの問診表オーラルフレイルの問診表(※1)作成者:東京大学高齢社会総合研究機構 田中友規、飯島勝矢
(※2)歯を失ってしまった場合は、義歯等を適切に使ってかたいものをしっかり食べることができるよう治療することが大切です。

噛みにくさなどの自覚症状があり、肉、野菜など食べにくい食材がある場合は、栄養が偏りやすくなります。症状が改善するまでは、食べやすいよう調理で工夫をし、栄養不足にならないようにしましょう(「コラム:いつもの料理を食べやすくする食事の工夫」参照)。 同時に、虫歯や歯周病を放置するなど、口の健康への関心の低下はオーラルフレイルにつながります。日頃から歯磨きや定期的な歯科受診で口の中を健康に保つなど、口腔ケアへの意識を高めておくことが大切です。

噛む力を鍛えて
オーラルフレイルのリスクを減らす

適切な手入れをせずに、柔らかいものばかり食べていると噛む力が弱くなるばかりか、唾液の分泌が減少し、口腔環境も悪化します。歯ごたえのあるものを積極的に取り入れるなど、食事を通して噛む力を鍛えることもオーラルフレイルの予防につながります。

よく噛む焼きそば中華めんにささがきごぼうを加えてボリュームアップ。
歯ごたえがあるので咀しゃく回数が増えて満腹感が得られます。

よく噛む焼きそば写真

  • ●1人分:373kcal
  • ●食塩相当量:2.06g
  • ●タンパク質量:17.6g
  1. 01.ごぼうは長めのささがきにし、水にさらして水けをきる。万能ねぎは根元を落とし、小口切りにする。フッ素樹脂加工のフライパンにサラダ油を熱してしょうが、にんにく、赤唐辛子を炒め、ひき肉を入れてほぐしながら炒める。
  2. 02.ごぼうを加えて炒め、しんなりとしたら中華めんを加えて水(分量外)、酒を振り入れ、ほぐしながら炒める。Aで味をととのえ、最後に万能ねぎを加えてサッと炒め合わせ、器に盛りつける。

材料(2人分)

  • 蒸し中華めん240g
  • ごぼう100g
  • 豚ひき肉,赤身80g
  • 万能ねぎ60g
  • 大さじ1/2
  • にんにく(みじん切り)小さじ1/2
  • しょうが(みじん切り)小さじ1/2
  • 赤唐辛子(小口切り)少々
  • 小さじ2
  • Aオイスターソース小さじ2
  • A醤油小さじ1・1/3
  • A0.40g
  • Aこしょう少々

蒸し鶏のナッツソースかけ中華でおなじみの「鶏肉のカシューナッツ炒め」を炒めずに蒸した一品。
しっとりとした鶏むね肉に、ナッツソースで噛みごたえをプラス。

蒸し鶏のナッツソースかけ写真

  • ●1人分:154kcal
  • ●食塩相当量:0.74g
  • ●タンパク質量:20.3g
  1. 01.鶏肉に酒を振ってラップをかけ、蒸気の上がった蒸し器で15〜20分ほど蒸す。レタスはせん切りにする。
  2. 02.白ねぎ、しょうがはみじん切りにする。カシューナッツはフライパンでから炒りし、細かく刻む。
  3. 03.刻んだカシューナッツ、ごま油、醤油、白ねぎ、しょうがを混ぜ合わせ、カシューナッツソースを作る。
    蒸し上がった鶏肉を取り出し、水けを取ってそぎ切りにする。皿にせん切りにしたレタスを敷き、鶏肉を盛りつけ、カシューナッツソースをかける。

材料(2人分)

  • 鶏むね肉,皮なし160g
  • 大さじ1/2
  • カシューナッツ15g
  • ごま油小さじ1/2
  • 醤油大さじ1/2
  • 白ねぎ4g
  • しょうが2g
  • レタス40g

切干し大根と人参のココナッツ和え歯ごたえのあるココナッツと切干し大根をエスニック風のおかずにアレンジ。
カルシウムも豊富な一品です。

切干し大根と人参のココナッツ和え写真

  • ●1人分:133kcal
  • ●食塩相当量:1.1g
  • ●タンパク質量:2.4g
  1. 01.人参は4cm長さの細切りに、にらは4cm長さに切る。切干し大根は水につけて戻し、水けを絞って食べやすい長さに切る。
  2. 02.フッ素樹脂加工のフライパンでココナッツファインを少し色づくまでから炒りする。切干し大根、人参、にらをサッとゆでてザルに上げ、荒熱を取って水けをしっかり取る。ボウルにAを混ぜ合わせ、ゆでた野菜とココナッツファインを加えて和える。

材料(2人分)

  • 切干し大根20g
  • 人参40g
  • にら50g
  • ココナッツファイン15g
  • Aココナッツオイル小さじ2
  • Aナンプラー大さじ1/2
  • A砂糖ひとつまみ
  • A粗びき黒こしょう少々

歯ごたえ汁食物繊維が豊富な大根、ごぼう、舞茸をたっぷり入れた汁物。
具材を少し大きめに切るのがポイント。

歯ごたえ汁写真

  • ●1人分:23kcal
  • ●食塩相当量:1.02g
  • ●タンパク質量:1.4g
  1. 01.大根は小さめの乱切りにし、大根の葉は小口切りにする。
  2. 02.ごぼうはささがきにし、水にさらして水けをきる。舞茸は石づきを落としてほぐす。
  3. 03.鍋にだし汁を入れて火にかけ、大根、舞茸、ごぼうを入れて煮る。火が通ったら醤油、塩で味をととのえ、大根の葉を加えてサッと煮る。椀に盛り、好みで七味唐辛子を振る。

材料(2人分)

  • 大根60g
  • 大根の葉20g
  • ごぼう30g
  • 舞茸20g
  • 醤油小さじ2/3
  • 小さじ1/6強
  • だし汁240ml
  • 七味唐辛子少々

コラム:いつもの料理を食べやすくする食事の工夫

「今まで食べていた料理が食べにくくなった…。」と感じても、食事の楽しみが減ってしまうと悲観することはありません。そんなときは、切り方や下処理にひと工夫してみましょう。ほんのひと手間で噛みやすく、飲み込みやすくなり、いつもの料理もぐっと食べやすくなります。

天ぷらは下処理にひと工夫

天ぷらは具材ごとに切り方や下処理を工夫します。また、サクサクした衣が食べにくい場合は、天つゆに浸してしっとりさせたり、サッと煮たりするとよいでしょう。また、つゆにとろみをつけると飲み込みやすくなります。

<具材の下処理>

イカやえび
表面に細かく切り目を入れる

なす
5〜8mm厚さの斜め薄切りにし、皮を切るように放射状に切り込みを入れる

青じそ
葉脈に3か所ほど切り目を入れる

玉ねぎ
繊維に垂直に。厚さは5mm幅程度が食べやすい

きんぴらは細切りで

繊維質の多いごぼうは細切りがおすすめ。3mm厚さの斜め切りにしてから3mm幅の細切りにすると繊維が断ち切られ、食べやすくなります。人参も同様に切ります。

また、炒め煮だけだとなかなか柔らかくならないので、圧力鍋を使うか、炒めた後にだしで煮るなどして、柔らかくしてから味つけします。

肉は酵素の働きでやわらかく

肉はやわらかくて食べやすい部位を選びましょう。牛肉ならヒレやサーロイン、豚肉ならももやロース、鶏肉はささ身や胸肉がおすすめです。赤身と脂身の間の筋は固くて噛み切りにくいので、調理前に包丁で切り目を入れて切っておきます。ステーキなどはさらに表面に縦横に切り目を入れておくと食べやすくなります。

また、にんにくやしょうが、パイナップル、キウイフルーツにはタンパク質分解酵素が含まれているので、生のまますりおろし、しょうが焼きやから揚げなどの漬け汁に加えると肉がやわらかく仕上がります。

<参考>
『絵で見てわかる かみやすい飲み込みやすい食事のくふう』
(女子栄養大学出版部)
監修・食事指導:山田晴子
絵:横田洋子